同じADHDであっても男女の違いで症状の現れ方が異なる場合があります。その症状の違いと、特に見逃されやすい女性に多いADHDの症状について具体例豊富に解説します。また、男性も女性に多くみられる症状の現れ方をしている場合もあるので、注意。
1.男性と女性のADHD
男性と女性ではADHDの症状の現れ方が異なる場合があります。
男性におけるADHDは症状が明確に現れることが多いため、家族や友人が気づきやすい傾向がありますが、女性のADHDは症状がわかりにくいため、見落とされやすく、発見が遅れる傾向があります。
そのためADHDの女性は、自分がADHDと気づくまで、長期にわたって強い自己嫌悪や劣等感に悩まされる可能性があります。
ただし、女性が男性に多く見られる典型的なADHDの症状を現す場合もありますし、その逆もあります。
したがって、ADHDかもしれない、思いつつもあまり典型的なADHDの症状がピンとこない方は、女性に多いADHDの症状を参考にしてください。
2.男性のADHD
男性の場合は女性に比べ、幼少期に『多動性』『衝動性』の典型的な症状がでることが多く、ADHDの症状が気づかれやすい特徴があります。
具体的にはADHDの男の子は、小学校のときに授業中に立ち歩いたり、よく友達と喧嘩をしてしまったり、服を脱ぎ出したりと落ち着きのない行動をすることが多く、そこからADHDであると診断されることが多いです。
しかし、見方によってはいつも積極的で体を動かすことが大好きな『元気な男の子』であるため、ADHDであることが見逃されることもあるので注意が必要です。
また、個人差により『不注意』の症状をより強く示し『多動性』『衝動性』の症状をあまり示さない男性が、ADHDであることが見逃されることもあるようです。
男性のADHDの症状は典型的な症状が多いので以前書いた記事、『ADHDの主な症状』をご参照ください。
また男性も、女性に多いADHDの症状を現す場合も十分あるので、女性のADHDについてもご参照ください。
3.女性のADHD
女性の場合は男性に比べ明確な症状が現れにくいことが多く、外からは気づきにくいのが特徴です。
とはいえど、あくまでADHDの女性の多数派が症状が現れにくいだけで、男性と同じ典型的なADHDの症状を現すこともありますし、男性が女性に多く見られる症状の現れ方をすることだってあります。
女性はADHDの症状として、『多動性』『衝動性』よりも『不注意』の症状が目立ちやすい傾向があります。
具体的には、ADHDの女性は周りから見ると、目立った問題行動は起こさないけれど、夢見がちで忘れっぽく、ミスが多い『おっちょこちょいでちょっと変わった人』と思われやすいです。
また、ADHDを持つ女性は、ADHDの症状のために1つの物事に集中出来ず、ときには社会のルールを破ってしまうことから、自己嫌悪に陥ることがあります。
さらに、他の人と交わらず傍観し、1人でいることを好む特徴をもつことがあり、社会的に孤立し、悩んでしまうこともあります。
くわえて、男性は暴力による攻撃性を持つことがあるのに対し、女性は言葉による攻撃性を持つことがあります。
ADHDの女性は往々にして自分を激しく責め、自己評価が低いことが多くあります。
そして、ADHDの女性は自分を大切にしなくなっていき、事件に巻き込まれたり、心の隙から宗教にのめり込んだり、様々な依存症の被害者になってしまうケースがあるので注意が必要です。
4.女性に多いADHDの症状
・内気で心配性
・自己評価が低く1人でいることを好む
・真面目だが注意力・集中力不足により成績が悪い
・夢想家ではなしかけていても聞いているように見えない
・言葉で冷やかしたり、誹謗中傷したり、他人を言葉で攻撃する
・おしゃべり
・協調性が欠けているため、長く友情関係が続かない
・(特に幼い頃)机や鞄の中が整頓されておらず乱雑
5.ADHDと男女比
男性の方がADHDである割合が高いイメージはありませんか?
実際に、ADHDの男女比について、統計的には男性の方が約3倍、ADHDの割合が高いとする調査が多くあります。
しかし、この結果から「ADHDの割合は、男性の方が高いのではないか」という意見に対して、「ADHDの割合は、大きな男女差はないのではないか」という意見も多く飛び交っています。
したがって、本当に男性の方がADHDの割合が高いのかはっきりと分かっていません。
なぜなら、この調査はあくまでADHDと診断された方をもとに作成されているからです。
よって、この統計には含まれていない、ADHDであることが発見されていない多くの女性がいるのではないかと考えられているのです。
たとえば、男性は小学校時代に衝動性や多動が原因で、すぐに人を殴ったり、授業中に立ち歩いたりといった問題を起こすことが多く、医師に相談する可能性が高いです。
一方、女性の場合は特に目立った問題は起こさないため、『個性』として見過ごされることが多く、ADHDであることが発覚されにくい為、病院に相談せず、男性よりADHDである割合が低くなりやすいのです。
このようなことから、統計的には男性の方がADHDの割合が大きくなってしまうが、女性もADHDの割合は変わらないのではないか考えられているのです。
6.ADHDである人の割合
人口あたりのADHDである人の割合は、ADHDの基準が統計により違うことからさまざまな割合が報告されています。
例えば、アメリカにおけるADHDである子供の割合について、アメリカ精神医学会では5%と推定されましたが、実際に行われたアメリカ疾病管理予防センターの調査(2012年~2014年)では10.2%と発表されています。
また、ADHDである大人の割合に関しては、アメリカ精神医学会では2.5%と推定されてていますが、ADHDである子どもの割合と同様に、ADHDである大人の割合も推定より多くいるのではないかと考えられます。
また、同じくアメリカ疾病管理予防センターの調査で、アメリカにおける州ごとの子供におけるADHD割合を比較した統計(2011~2012年)によると、州によってかなり割合が異なった結果が出ています。
この結果によると、最もADHDの割合が低い州はネバダ州で5.6%、高い州はケンタッキー州で18.7%と大きな開きがあります。
この大きな割合の違いはこのサイトで記事で扱っている、ADHDの原因の1つ、「遺伝」によるものなのかもしれません。
ちなみに日本ではADHDの割合に関する直接的な調査が行われていないため、具体的な割合は分かりません。
しかし、文部科学省による調査(2012年)により、通常学級に在籍していて、ADHD、高機能自閉症、学習障害(LD)等のために、特別な教育的支援を必要とする児童が約6.5%在籍している可能性があることが発表されています。
【参考データ】
アメリカ疾病管理予防センターのデータ(※英語です)
https://www.cdc.gov/ncbddd/adhd/data.html
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アメリカ精神医学会のデータ(※英語です)
https://www.psychiatry.org/patients-families/adhd/what-is-adhd
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文部科学省のデータ
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/material/1328729.htm